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教授就任のご挨拶

この度,2023年8月1日付で分子細胞生物学研究室(旧生物化学研究室)の第5代教授を拝命しました竹林慎一郎です。

 

私は1993年に三重大学生物資源学部に入学し,学部4年生として生物化学研究室に配属されました。大学院へと内部進学し,研究室前任の奥村克純教授の指導のもと2002年に博士の学位を取得しました。学生時代は研究に没頭し,良い研究室の仲間にも恵まれ,自分の未熟さに苦しむ時もありましたが,今思えば大変幸せな時間を過ごさせていただきました。今もその時の気持ちを忘れずに,研究室での教育・研究に取り組んでおります。1956年に新設されて以来,70年近い伝統のある研究室で,これまで培われてきた学問を次の世代に引き継いでいく責任の重さを日々感じております。全力をかけて職責を全うする所存です。

 

21世紀はゲノムの時代とも呼ばれておりますが, 研究室では動物細胞ゲノムの構造と機能に関する研究を進めています。具体的には,ゲノムDNAに書き込まれている遺伝情報を細胞がどのように利用しているのかについて調べています。この研究は,食品成分がどのように私たちの健康に役立っているのかを分子のレベルで理解することにもつながります。将来的には,ゲノムDNAを合成して人工細胞を作り出すような研究にも関係してくることです。研究技術は時代とともに大きく変わってきています。私が学生だった頃に国際共同研究チームが巨額の資金を投じて何年もかけて行っていたような実験が,技術の進歩により私たちのような一研究室が数日でできるような時代になってきています。しかし,そのような時代の大きな変化の中でも,変わらないものがあります。それは,世界に伍する最先端の研究を行っていくという研究室の教員や学生の情熱です。新しいことにチャレンジし続け,周りからはちょっとクレイジーだと思われるようなぶっ飛んだ研究をしたいと密かに思っています。研究室では,そのような最先端の研究を進めていく上での苦労や厳しさを感じることがあるかもしれません。しかし同時に,私自身がそうであったように,学生たちにとって研究室が自分と誠実に向き合ってくれる大切な人たちと出会える場でもあってほしいと願っています。

 

子供の頃から海が好きで,海に関わることがしたいと思い生物資源学部に進学したのがすべての始まりでした。当時の生物資源学部は入学後しばらくしてから希望のコースを選択でき,その時に自分でも驚きなのですが海とは関係のない農芸化学コースに進み,最終的には生物化学研究室に所属することになりました。なぜそのような選択をしたのか今となってはよく思い出せないのですが,おそらくそれが自分にとって幸せになれる選択だったのでしょう。その時は30年後の自分を想像できるはずもありませんでしたが,振り返ってみれば,実際に最良の選択をし,それが母校で教育・研究に携わるという今に繋がっているのだと感じます。これまで公私に渡り,支えてくださった方々にはこの場をお借りして感謝申し上げます。あの時の自分の選択が最良だったと今後も思えるように努力して参ります。今後ともご指導の程,よろしくお願い申し上げます。

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