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​研究プロジェクト

これまで私たちの研究グループが培ってきた分子細胞生物学的研究手法、顕微鏡を用いた一細胞レベルでの遺伝子動態解析法、ゲノム網羅的な遺伝子発現•クロマチン構造解析技術などを用いて、以下の課題に取り組んでいきたいと考えています。

1.高次染色体構造の制御機構の解明
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染色体DNAは単に遺伝子が集積した構造体ではなく、それぞれの遺伝子が適切に働くための機能ドメインの集合体として理解する必要があると私たちは考えています。そして、エピジェネティック制御を考えるときも、同様に染色体機能ドメイン単位での制御を考慮する必要があると考えています。
実際にDNAメチル化により制御を受ける遺伝子群が、特定の染色体領域に数百kbにわたりドメインを形成している例も見つかっています。これまで機能ドメインとよばれる高次染色体構造を解析することは技術的な点から困難でした。しかし、最近はトポロジカルドメイン(TAD)、DNA複製ドメイン(RD)、ラミナ結合ドメイン(LAD)などを解析できる新しい技術が開発され、高次染色体構造についてDNA配列レベルでアプローチすることが可能になりました。私たちは、これらの新しい技術を用いて、細胞の分化や老化の過程でおこる高次染色体構造変化がエピジェネティク制御や遺伝子発現制御にどのように関わっているのかについて明らかにしていきたいと考えています。同時に、これまでほとんど何も分かっていない高次染色体構造を制御するDNA配列や調節因子の同定についても進めていきたいと考えています。
2.エネルギー代謝変化とエピジェネティクス
図3.png
最近の研究で、細胞のエネルギー代謝経路(解糖系、TCA回路、電子伝達系など)の状態とエピジェネティック制御との間に密接な関係があることが分かってきました。これは、エピジェネティック制御を担う酵素の活性が、アセチルCoA、S-アデノシルメチオニン, NAD, FADなどのエネルギー代謝産物に依存しているからです。例えば、DNAメチル化酵素は、その酵素活性を発揮するためにS-アデノシルメチオニンをメチル基の供与体として必要としています。つまり、栄養ストレスによって細胞内の代謝産物の量が変化すると、それがエピジェネティック制御を担う酵素の活性に影響を与える可能性があり、実際そのような例がいくつか見つかっています。例えば、老化細胞では若い正常細胞と比較して、エネルギー代謝状態が大きく異なっています。この違いがエピジェネティック制御に影響するのではないかと推測されますが、詳しいことがわかっていません。私たちのグループでは、このようなエネルギー代謝の下流で影響を受けるDNAメチル化やヒストン修飾などのエピジェネティック制御について明らかにしていきたいと考えています。
3.老化細胞のリプログラミング(若返り)
リプログラミング因子を使って、老化した細胞から未分化な状態のiPS細胞をつくることはできます。しかし、もとの健康な体細胞の状態にもどす若返りには成功していません。老化を誘導するキーとなるシグナル伝達経路などを明らかにし、それらを人為的に制御することで、老化を遅らせたり、若返らせたりできるのではないかと考えています。この時、細胞のエネルギー代謝やエピジェネティックな制御も同時に変化させることも重要になってくるかもしれません。いくつか具体的なアイデアがあるので、それらを試していきたいと考えています。
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